Translate

2016年7月15日金曜日

革命権

1889年の大日本帝国憲法の発布に先立ち、民間から憲法の私案が多数提案された。
皇后陛下が2013年の誕生日のお言葉で言及した「五日市憲法草案」もその一つである。長いが関連部分を引用する。

「5月の憲法記念日をはさみ,今年は憲法をめぐり,例年に増して盛んな論議が取り交わされていたように感じます。主に新聞紙上でこうした論議に触れながら,かつて,あきる野市の五日市を訪れた時,郷土館で見せて頂いた『五日市憲法草案』のことをしきりに思い出しておりました。明治憲法の公布(明治22年)に先立ち,地域の小学校の教員,地主や農民が,寄り合い,討議を重ねて書き上げた民間の憲法草案で,基本的人権の尊重や教育の自由の保障及び教育を受ける義務,法の下の平等,更に言論の自由,信教の自由など,204条が書かれており,地方自治権等についても記されています。当時これに類する民間の憲法草案が,日本各地の少なくとも40数か所で作られていたと聞きましたが,近代日本の黎明期に生きた人々の,政治参加への強い意欲や,自国の未来にかけた熱い願いに触れ,深い感銘を覚えたことでした。長い鎖国を経た19世紀末の日本で,市井の人々の間に既に育っていた民権意識を記録するものとして,世界でも珍しい文化遺産ではないかと思います。」
http://www.kunaicho.go.jp/okotoba/01/kaiken/gokaito-h25sk.html

同案と並び有名なのが、自由民権運動に参加した植木枝盛による「東洋大日本国国憲按」である。この案の最大の特徴は、人民の自由と権利を守るために、政府に対する抵抗権と革命権を認めたことである。

第70条 政府国憲ニ違背スルトキハ日本人民ハ之ニ従ハザルコトヲ得
第71条 政府官吏圧制ヲ為ストキハ日本人民ハ之ヲ排斥スルヲ得
     政府威力ヲ以テ擅恣暴逆ヲ逞フスルトキハ日本人民ハ兵器ヲ以テ之ニ抗スルコトヲ得
第72条 政府恣ニ国憲ニ背キ擅ニ人民ノ自由権利ヲ残害シ建国ノ旨趣ヲ妨クルトキハ日本国民
     ハ之ヲ覆滅シテ新政府ヲ建設スルコトヲ得



画像は国会図書館のホームページより転載
http://www.ndl.go.jp/modern/img_r/020/020-014r.html
http://www.ndl.go.jp/modern/img_r/020/020-015r.html

改憲勢力が衆参共に3分の2を超えたことで、今後憲法改正の動きが具体化することだろう。日本近代初期の熱気に負けない活発な議論が興り、広く国民の関心を呼ぶことを期待したい。
私権を制限する条項を安易に加えたがるような改憲論者には、革命権条項でも突きつけてやりたい気がしてくる。