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2022年11月23日水曜日

ジーニアス英和辞典 第6版

9年ぶりの改訂。今回の特徴は、発音の最近の動向・変化に関する専門的な説明を巻頭に加えたことと、各見出し内で語源や言葉の歴史の解説を増やしたこと。他はあまり変わっていないという印象。
追加された新語では以下の項目が目についた。

・COVID-19(新型コロナウイルス感染症)
・cancel culture(SNSなどで欠陥をあげつらい、対象となる有名人や物を排除しようとする風潮)
・deepfake(偽物とは見破れないほど精巧なデジタル画像)
・influencer(SNSなどで影響力を持つ人)
・cryptocurrency(暗号通貨)
・binge-watch(番組などを一気に見る)

一方で、woke(社会問題などに敏感な、そうした分野での「意識高い系」)は入っていなかった。woke は Oxford Advanced Learner's Dictionary (OALD)の第10版(2020年)には掲載されており、今回の改訂で入れておいて欲しかった。

また post-truth(事実よりは自分が信じたり感じたりすることを優先すること)を追加したなら、alternative fact も掲載して欲しかった。

 他に入れておいて欲しかったのは sandbox(子供が自由に遊ぶ砂場)の新しい語義である「規制緩和などを自由に試す環境」などである。

2014年末の前版から meme(遺伝子であるかのようにコピーされる社会文化的情報、ネット上で急速に流行する情報)や selfie(自撮り写真)を掲載するほど感度が高い編集陣なので、やや残念。

他に新規掲載事項で目についたのが、how の項目の How do you mean? 「どういう意味ですか?」。What do you mean? の詰問調になりがちな言い方と比べ、より柔らかい言い方ということだそうだ。初めて知った。

この辞書には、以前から hope や point out などいろいろな項目に、言葉遣いが不躾にならないような表現の工夫の説明があり、大変勉強になるが、こうした内容をコラムか何かでまとめてもらえると便利だと思う。

あと、最近気になるのが S be planned to do という言い方で、「Sが do するよう予定されている」という意味になると思うのだが、これについては引き続き掲載がなかった。本来は正規の用法ではないと思うのだが、be scheduled to do などとの類推だろうか、急速に利用が広がっているように感じる。日本の特許の英訳や、EUなど多言語を扱う国際機関の文書で多用されているが、今では米国政府の発表文でも見られるようになっている。次回の改訂では正用法として掲載されるか、あるいは正用法とは言えないと注記されるか、注目している。似た構造で S be wanted to do「Sが do するよう望まれている」という正用法とは言えない言い方があるが、これも目にする機会がじわじわ増えている気がする。

Olympic Games は引き続き複数扱いということになっているが、東京五輪の際には、国際五輪委員会(IOC)や、海外英字メディアの多くが単数扱いにしていたように思う。a Games や an Olympics といった表記もよく見かけた。正確には分からないが、今は単数扱いの方が主流なのではないだろうか?