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2013年11月26日火曜日

トレンド日米表現辞典第4版の研究10

p.238 プライベートバンキング PB private banking
前の版にはない、次のような例文が追加された。
「プライベートバンキングは一般には1億円以上の資産のある富裕層が対象とされる。Private banking is said to be targeting for those wealthy people whose assets total more than 100 million yen.」

target は「~をターゲットとする」の意味では「target ~」か「is targeted at ~」という形で用いる。
参考までに研究社の英和活用大辞典(1995年)を見ると「targeted for」の例が載っているが、この for は「~のため」という意味。
「This area has been targeted for development. この地域は開発の目標とされてきた。」

また「more than ~」は「~を越える」という意味。「1億円以上」は1億円を含むので意味が違う。その他細かい変更を加えて、例文を以下のように変えてはどうか。最近は1億もいらないらしいけど。
「プライベートバンキングは、通常金融資産を1億円以上保有する富裕層が対象となる。Private banking usually targets wealthy people with 100 million yen or more in financial assets.」

p.240 金融商品取引法(投資サービス法) Financial Products Transaction Law
正式な名称は「Financial Instruments and Exchange Act」である。
この版の出版のずいぶん前、2006年6月21日付の金融庁の英文発表資料に書いてある。
http://www.fsa.go.jp/en/policy/fiel/20060621.pdf
http://www.fsa.go.jp/en/news/2006.html

同法の全文英訳は以下のページにある。
http://www.japaneselawtranslation.go.jp/law/detail/?ft=2&re=01&dn=1&yo=%E9%87%91%E8%9E%8D%E5%95%86%E5%93%81&x=0&y=0&ky=&page=1

郵政公社を扱った時にも書いたが、独自の翻訳を正式の英文名称であるかのように表示するのはやめてもらいたい。

生徒にこの辞書を丸暗記させる通訳学校があるようだが、よく内容を確認もせずにこの版を丸暗記させたりしてはいけない。

2013年11月21日木曜日

「寄生獣」祝・映画化

人気漫画「寄生獣」が実写映画化!テレビアニメプロジェクトも始動

Movie Walker 11月20日(水)13時32分配信
1990年から95年まで「月刊アフタヌーン」で連載され、今なお高い人気を誇る岩明均の漫画「寄生獣」が、『ヒミズ』(12)の染谷将太主演で実写映画化。2014年1月から撮影スタートし、2部作で製作されることがわかった。
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131120-00000012-mvwalk-movi


実写化される日が来るとは想像していなかった。見に行くかどうかは分からないけど、わくわくします。


昔、雑誌の懸賞で当てたミギーのフィギュアです。

2013年11月17日日曜日

トレンド日米表現辞典第4版の研究9

p.285 利回り yield
「国債などの債券の場合は表面利子に対する証券価格の割合をさす」とあるが、逆である。「価格に対する利子等の割合」が正しい。前の版の「利回り」の項目には説明がなかったが、誤った説明なら無い方がましだ。

p.287 国債先物 government bond futures
「表面利率6%の10年物国債」としか書いていないが、「を取引対象とする先物商品」などといった説明が続かないと意味が通らない。国債は発行のたびに表面金利などが変化し、これを基にそのつど先物を作ると価格に継続性がなくなるため、表面利率6%の10年債など架空の債券が取引対象として設定されている。

p.287 超長期国債 20-year/30-year government bond
前の版が「超長期国債」の訳語を「20-year government bond」としていたため(それもどうかと思うが)、改訂に当たり新規に発行開始となった30年債を継ぎ足したのだろう。しかし2000年から2008年にかけて発行された15年変動利付国債が抜けているし、現在では40年債も発行されている。海外では100年債が検討対象となり、過去には償還期限のない永久債が発行された例もある。

訳語を superlong government bond などとし「償還までの期間が10年を超える国債」と定義を与えれば、何年債が出ようと関係ない。

p.287 物価連動国債 indexed government bond
inflation-indexed government bond あるいは inflation-linked government bond が正しい。

p.287 電力債 electric power bond
前の版では正しく「electric power company bond」としていたものを、わざわざ間違った言い方に書き直している。

トレンド日米表現辞典第4版の研究8

P.272 総会屋
greenmailer を「村上ファンドの村上世彰元代表等が行ったとされる違法すれすれの行為」としているが、説明になっていない。固有名詞を挙げる前に「企業の株式を、高値で買い取らせることを目的に買い集める敵対的買収を行う者」など端的な定義を示すべき。

p.272 社員持ち株制度 employee ownership program; EOP
間違いではないが、stockを入れてemployee stock ownership program (ESOP)とするのが普通。programの代わりにplanもよく使われる。

p.283 指値 limited order
普通は limit order という。

p.283 成り行き注文 discretionary order; market order;...
discretionary order は一任(取引契約に基づく)売買注文を指す。

Barron's Dictionary of Finance and Investment Terms (Fourth Edition 1995)での定義は以下の通り。
・discretionary order: order to buy a particular stock, bond, or commodity that lets the broker decide when to execute the trade and at what price.
・market order: order to buy or sell a security at the best available price.

p.284 順張り tide-following dealing
普通は tide ではなく trend を使う。

2013年11月16日土曜日

からたちの小径

先日、島倉千代子さんの告別式の様子をテレビで拝見したところ、亡くなる3日前に自宅で収録した「からたちの小径」という曲が流された。

いつもの軽やかな声ではあったが、か細くてビブラートがやさしく、かえって情感が強くこもっているように感じられ、胸が熱くなった。人生最後のレコーディングと覚悟の上である。何を想いながら歌ったのだろう。肉声の力を思い知らされる歌声だった。

肉声と言えば、田中好子さんが2011年4月に亡くなったすぐ後に公開された音声メッセージも忘れ難い。「私も一生懸命病気と闘ってきましたが、もしかすると負けてしまうかもしれません。でもその時は必ず天国で被災された方のお役に立ちたいと思います。」という一節を含んだメッセージである。

この2人ほど見事にはできなくても、死に際し、私もきちんと人生を総括することができるだろうか。せめて身近な者には何らかの形でメッセージを残したいものだ。

改めてお2人のご冥福をお祈りします。

2013年11月13日水曜日

本日の引用:Embracing Defeat John Dower著

「In these circumstances, it was not surprising that a pervasive victim consciousness took root, leading many Japanese to perceive themselves as the greatest sufferers from the recent war. The misery on hand was far more immediate and palpable than accounts of the devastation that the imperial forces had wrecked on strangers in remote lands.」W.W.Norton社 P.119

敗戦直後の苦難の中、国民の間に被害者意識が蔓延する余り、旧日本軍による国外での蛮行に関心が高まらなかったというのは、きっとその通りなのだろう。よそから指摘されると腹が立つけど。

まだ半分も読んでいないが、全体的にフェアな記述が多い。進駐軍と慰安婦・売春婦の関係に象徴的に表れる、占領下における日米間の貧富の差や主従関係に対する国民の複雑な感情も丁寧にすくい取っている。

支配者と被支配者の関係にまつわる性的な含意を説明する以下の文も示唆的で印象深い。

「The enemy was transformed with startling suddeness from a bestial people fit to be annihilated into receptive exotics to be handled and enjoyed. That enjoyment was palpable--the panpan personified this. Japan--only yesterday a menancing, masculine threat--has been transformed, only in the blink of of an eye, into a compliant, feminine body on which the white victors could impose their will.」P.138

東日本大震災以降、日本人がどういう人々なのか、外国からどのように見られているのかが気になり、本書もそうした興味の下で読み始めた。その他に印象に残っているのは渡辺京二氏の「逝きし世の面影」(平凡社ライブラリー)で、江戸時代に頂点を迎えた日本「文明」が失われていく様を明治期前後に訪日した外国人の手記を基に記した本だ。

「逝きし世の面影」についてはまた触れることがあるかもしれない。今後も同様のテーマの本を読んでいきたい。