Translate

2014年4月16日水曜日

トレンド日米表現辞典第4版の研究13

p.179 消費支出 consumer spending [consumption]
ちなみに総務省は consumption expenditures としている。
消費支出とは「いわゆる生活費のことであり、日常の生活を営むに当たり必要な商品やサービスを購入して実際に支払った金額」で、それに対して「税金や社会保険料など原則として世帯の自由にならない支出」を非消費支出という。
http://www.stat.go.jp/data/kakei/kaisetsu.htm#p1

旧版と例文を比較してみる。
<第3版>
「1996年の月平均実質消費支出は32万8,848円で、前年比0.1%減と4年続けてマイナスとなった。
  The average consumer spending of Japanese households fell inflation-adjusted 0.1% year on year to ¥328,848 in 1996 for the fourth consecutive year of decline.」
<第4版>
「総務省によると、2005年12月の実質消費支出(全世帯)は34万6,230円で、実質で前年同月比0.8%増となり、05年10月以来2か月ぶりのプラスとなった。
  According to the Ministry of Internal Affairs and Communications, the average monthly consumer spending of all Japanese households rose inflated-adjusted 0.8% year-on-year to ¥346,230 in December 2005, marking the first growth in two months since October of the same year.」

第4版の日本語の文は冗長。「実質消費支出」と「実質で前年同月比」で2回「実質」という語が使われているので、どちらかを削除する必要がある。また「2か月ぶりのプラス」の前の「~以来」は示すまでもないので不要。例えば「41か月ぶり」みたいに結構昔のことなら「~月以来」と書いてもそれなりに意味があるけど。

英語の方に移る。第4版では、前の版で抜けていた「monthly」を「average」の後に挿入したのはよい。しかし「全世帯」を「all Japanese households」とすると文字通り日本にある全ての世帯という意味になってしまう。この統計(家計調査という)の示す「全世帯」は勤労者世帯とそれ以外の世帯を合わせたもの。
http://www.stat.go.jp/data/kakei/kaisetsu.htm#p5

また「実質」を「inflated-adjusted」としているが、前の版で正しく「inflation-adjusted」と書いてあったものをわざわざ間違えて書き直している(ちなみに数字の直前に置かれるinflation-adjustedの前には不定冠詞を入れる必要がある)。「year on year」も副詞句として使う場合はハイフンは要らないのに、わざわざ間違えて書き直している。

*4月18日追記:例文の主語「spending」の後の前置詞は at か by が適切。また2005年は全体的に物価が下がっていたので「inflation-adjusted(インフレ調整後)」とするより「price-adjusted(物価調整後)」とする方がよい。「実質」という意味の「real」を用いてもいい。

トレンド日米表現辞典第4版の研究12

p.244 公的資金の返済 repayment of capital injection
前回見落としていたが、見出しの英訳は「repayment of public funds」などとすべき。「repayment for capital injection(資本注入のお礼)」ならまだ理解可能。もちろん変だけど。
また例文では「inject public funds to ~」という構造の文を示しているが、前置詞はintoが正しい。

p.245 長期信用銀行 long-term credit bank
「日本興業銀行は2002年、みずほ銀行に統合された」とあるが、正しくはみずほコーポレート銀行。法手続き的には興銀が富士銀行に吸収された形になるが、本店も基幹システムも興銀のものを引き継いだので、興銀を母体にみずほコーポレート銀行が設立されたという方が実情に近い。昨年7月にみずほ銀行と合併し名前から「コーポレート」が外れたが、本店となったのは旧興銀本店だった。来月、旧富士銀本店跡地を再開発したビルに本店を移転する予定。

p.245 信託銀行 trust bank; trust and banking company
「2006年6月現在では、中央三井信託銀行、三菱UFJ信託銀行、みずほ信託銀行の3行しかない」とあるが、住友信託を忘れている。日本長期信用銀行が潰れそうな1998年、実質救済目的の経営統合を発表したり(後に破談)、2004年にUFJ信託との合併の合意が破棄され、三菱東京フィナンシャルグループと法廷闘争になったりと、話題に事欠かなかった。この項目の著者はニュースを見ていなかったのだろうか。以下の本でも読んで当時の雰囲気を思い出したらよい。
http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=14991

また、当時の正確な数は知らないが、外資系を含めると信託銀行はもっとたくさんあったはずだ。さらに信託併営だった大和銀行の流れを汲むりそな銀行も、信託銀行の免許を持っている。

2014年4月11日金曜日

トレンド日米表現辞典第4版の研究11

p.242 ビッグバン、金融大改革
囲み記事の中で、宇宙のビッグバンのことを「水素原子の大爆発」と説明しているが、違うのではないだろうか。普通は「超高温・超高密度の火の玉の爆発的膨張」などと記述され、原子が発生しうる以前の状態を言うと思うのだが…。以下は国立科学博物館による説明のリンク。
http://www.kahaku.go.jp/exhibitions/vm/resource/tenmon/space/theory/theory02.html
*7月24日追記:この囲み記事は第4版で大幅に書き換えられていますが、「水素原子の大爆発」のくだりは前の版から引き継いだもので、第4版固有の問題ではありませんでした。

p.243 日本銀行[日銀]政策委員会
審議委員のことを「councilor」としているが、正しくは「member of the Policy Board」。「councilor」だと間違っているだけでなく、「参与(counsellor)」と紛らわしいので要注意。参与は財界の重鎮など外部の人間が務め、政策委員会の諮問に応じたり、独自に意見を述べたりする。以下のリンクは主要な役職の日英対訳。
http://www.boj.or.jp/announcements/education/oshiete/outline/a09.htm/

p.244 公的資金の返済
りそなホールディングスを「Risona Holdings Co.」としているが、正しくは「Resona Holdings Inc.」。
「りそな」はラテン語で「resona=共鳴する、響きわたる」という意味で、顧客と共に響き合い、絆を深めたいとの思いで決めた名前だそうだ。
http://www.resona-gr.co.jp/holdings/news/hd/pdf/140412_1a.pdf