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2014年7月3日木曜日

読書ノート:震災以降 渋井 哲也、村上 和巳、渡部 真、太田 伸幸 編著

三一書房。新刊で購入。

被災地での略奪行為やレイプなど、新聞やテレビであまり報道されなかった震災の側面に光を当てた「風化する光と影(マイウェイ出版)」の続編。掲載されている数多くのエピソードに、震災や復興の記録を続けていこうという記者の心意気が感じられる。

震災や原発事故のような巨大で刺激の強い出来事が起こると、どうしても物事の複雑な様相には目が向かず、分かりやすい構図に単純化して理解した気になってしまう。本書の記者達は当事者に話をよく聞き、現地での機微をよく伝えている。

例えば、徹底した防災教育により子供の生存率が高くなったという「釜石の奇跡」について取材すると、ある学校の避難行動は、方針が場当たり的で、たまたま最初に避難した所から逃げたところ、僅差で津波を免れたという。児童や生徒に話を聞いても、釜石で生存率が高かったのは「奇跡じゃなくて偶然」という声が多かったそうだ。

また市の防災課の職員から以下のような証言を引き出している。
「釜石市の小中学校では、震災前から津波防災教育をしてきました。こうした軌跡があったから避難ができたのではないか、と新聞社の取材に答えた事があります。もし私の言葉をもとに『釜石の奇跡』という言葉が生まれたのならば『キセキ』違いです」p.130

現地の震災教育から学ぶ点は多いが、当日の避難行動にミスがなかったか、準備に不備がなかったかなど冷静な評価が必要だと指摘している。

本書の巻末には、現地のグルメ情報が載せてある。被災地を何度も訪ね歩いた苦労と、少しでも現地を盛り上げる役に立ちたいという願いが感じられ、頭が下がる思いだ。私も行く機会があれば、試してみよう。

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