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2013年8月29日木曜日

トレンド日米表現辞典第4版の研究6

P.274 店頭市場 the over-the-counter market; OTC
店頭市場の例を挙げ「日本では東京証券取引所(東証)に旧『ジャスダック』『マザーズ(the TSE Mothers)』、大証に『ヘラクレス(the OSE Hercules)』や『ベンチャーファンド(the OSE Venture Fund)』、名証に『セントレックス(the Centrex)』、札証に『アンビシャス(the Ambitious)』がある」としている。

札証まで出しているのだから、国内五証取の残りの一つである福証のQ-Boardもぜひ入れておいて欲しかったが、まあいい。次に挙げる項目もそうだが、書き手は店頭市場(現・ジャスダック)と新興市場を混同している。

上に例示されているのはほとんどが新興市場である。新興市場は、ベンチャー企業などが容易に上場できるよう、上場基準を特別に緩めてある市場のことで、日本では長いこと店頭市場が新興市場的な役割を果たしてきた。誤解はこの辺りから発生しているのだろうが、店頭市場は新興市場の一つにすぎず、新興市場だから必ずしも店頭市場であるわけではない。

上記引用部には、他に問題が2つある。大証のベンチャーファンドは新興市場ではなく、新興企業に投資するベンチャーファンドを上場させるための市場部門である。またジャスダックは、この辞書の執筆・発売当時は東証の組織ではなかった。後にジャスダックは大証と統合し、これがまた東証と統合した。現段階ではジャスダックは東証の一部門となっている。

P.274 新興市場 the emerging markets
「上記『店頭市場』の2004年12月以降の新しい名称で、『ジャスダック証券取引所』、東証の『マザーズ』、大証の『ヘラクレス』や『ベンチャーファンド』、名証の『セントレックス』、札証の『アンビシャス』の総称」
冒頭の「上記『店頭市場』の2004年12月以降の新しい名称で」という説明さえなければ、間違いではない。Q-Boardが入ってないのでアンビシャスの後に「など」と入れておいて欲しいが。

店頭市場は、元々証券会社の店頭での取引を組織化したものだが、2001年に市場運営業務がジャスダックに移管され、市場の名前も同じ年に「ジャスダック市場」となった。つまり「2004年12月以降の新しい名称で」というのは店頭市場の説明としても正しくない。2004年12月は次ページの項目で説明があるように、ジャスダックが証取としての免許を取得した時期である。

P.285 売買手数料 securities companies' commission(s); stock brokerage(s); broker's commission(s)
「▸1975年から自由化」
75年は米国の話。日本では98年に部分的に自由化し、翌年10月に完全自由化した。株式売買手数料の自由化は、橋本内閣による金融ビッグバンの目玉の一つ。

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