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2013年6月26日水曜日

読書ノート:絶対音感 最相葉月著

小学館文庫版を古本屋で購入。絶対音感とは何かを追究することで、音楽や人間の認知機能の神秘について話が深まっていく。

身近にピアノを習っている人はたくさんいたが、絶対音感があるという人には一人しか会ったことがない。当時は、音の名前やコードがたちどころに分かってすごいなと思うぐらいで深く考えなかったが、本書によると、能力が研ぎすまされている余り、音楽が音楽として楽しめなかったり、楽団や曲により音の高さが微妙に違うと適応するのに苦労したりと、問題に直面するケースが結構あるそうで驚いた。他にも、音楽教育と創造性の関係とか、交響曲の指揮者が音の洪水の中からどのように特定の楽器の音を聞き分け、演奏をまとめあげていくのかなど興味深い話題がいくつもあった。

本筋からやや外れるが、印象に残ったのが「ダイナミックなパターンの中にこそ情報が含まれる」という一節。例えば「aia」という発音の一連の音声を細分化しても「ae」といった混じった音が聞こえるのみで、明確な「a」や「i」の音は聞こえないそうだ。物質もどんどん分割していくと、我々が身近に知っている物質とは異なった姿が現れてくる。素粒子の単位になると具体的な様子を想像することすら難しい。対象を全体で捉えるのか、パーツに分けて考えるのか、思想史上、繰り返し現れるテーマながら、改めて興味深く感じた。

この本のように深く追究していくスタイルっていいな。同じ著者の「青いバラ」(小学館)も読んでみようと思う。いや、やはり同じ著者による星新一の伝記(新潮文庫)を上巻しか読んでないから、そちらが先かな。

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